僕ね、2021年ごろから毎週土日、セミナーに通い続けていた時期があるんですよ。「本物の師匠はどこや」と探して、探して、探しまくった。治療家として「この技術で人の人生を変えられる」と確信できるものを見つけるまで、関西から東京まで飛んで、ほんまにずっと走り続けていた。
そのときに思い知ったことがあります。熱中するという体験そのものが、人を育てる。技術を身につけた以上に、あの「好きを追いかけ続けた経験」が今の僕の根っこになっている。
今日はそういう話をしたいんです。
「好きを仕事にしなさい」って、よく言われますよね。親御さんなら一度は子供に伝えたことがあるんじゃないかと思います。でも、その言葉がときに子供の「好き」を壊してしまうことを、僕は治療家として、また経営者として、肌で感じています。
大事なのは「好きを仕事に変える」ことじゃない。今、熱中できているか——それだけです。
「好きを仕事に」というプレッシャーが、逆に「好き」を殺す
子供が何かに夢中になっているとき、親御さんはどうしても「将来役に立つの?」「仕事にできるの?」って思ってしまう。これ、ほんまに自然な感情です。でもそれを口に出してしまうと、子供の中で何かが変わるんですよ。
心理学に「過剰正当化効果」という研究があります。もともと自分でやりたくてやっていたことに、外から「報酬」や「目的」を与えると、かえって内発的な動機が下がる、というものです。
絵を描くのが好きな子が「将来イラストレーターになれるね」と言われ続けると、子供の中で何かが変わります。「自分はイラストレーターになれるかどうか」という視点で絵を評価するようになる。うまくいかなかったとき、「向いていないのかもしれない」と、好きを手放してしまう。

これ、体と同じなんですよ。僕が治療の世界で10年以上かけて学んだのは「見えないところに原因がある」ということです。痛いところだけを揉んでも治らない。「好きが仕事になるか」という問いも、「好き」の表面しか見ていない。本当に大事なのは、「好き」を追いかける過程で子供の内側に何が育つか、なんです。
熱中体験が、子供の内側で育てているもの
何かにとことんはまった経験って、大人になってからも「あのとき俺、あそこまでやり切った」って思い出せますよね。それ、ただの記憶じゃないんですよ。
心理学者のミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー状態」という概念があります。人は自分の能力の限界近くで何かに挑戦しているとき、時間を忘れて没入する。そのフロー体験が積み重なることで、脳は「困難に直面しても諦めない」という回路を育てていくと言われています。
もっと具体的に言うと、熱中体験は以下を育てます。
グリット(やり抜く力) — 好きなことだから、しんどくても諦めない。この繰り返しが「粘り強さ」の土台になる
自律心 — 自分で問いを立て、自分で試し、自分で評価する。これが「自分でやれる」という感覚を育てる
失敗への耐性 — 好きなことだから、うまくいかなくても「もう一回やってみよう」と自然に思える。この経験が、失敗を怖れない人間性につながる

才能があるかどうか、仕事になるかどうか——そんなことより、ずっと大事なものが育っています。
研究が示す「やり抜く力」の育ち方
ペンシルベニア大学の心理学者アンジェラ・ダックワース博士の研究をご存知ですか? 博士は長年にわたって「何が人の成功を左右するか」を研究してきました。
分かったことはシンプルで、IQでも才能でもなく、グリット(情熱×粘り強さ)が人生の成功を最もよく予測する、ということです。ウエストポイント陸軍士官学校での研究や、全米スペリングビーの大会でも、グリットの高い人ほど長く生き残ることが示されています。
そして、そのグリットはどこで育つか。ダックワース博士の言葉を借りると、「好きなことを追いかけ続けた経験の中で育つ」のです。
スタンフォード大学のキャロル・ドウェック博士が提唱した「成長型マインドセット」——努力で人は伸びられるという信念——も、ここに関係します。ドウェック博士の研究では、知性を褒めるより「努力と過程」を認める声かけが、子供の成長型マインドセットを育てることが示されています。好きなことに夢中になっているとき、子供は自然に「もっとうまくなりたい」「もう一回やりたい」という感覚を積み重ねます——これはまさに成長型マインドセットが育つ土壌です。

「この子、何が向いてるんやろ」って悩む前に、「この子が今、何に夢中になってるか」を見てほしいんです。その夢中の質と時間が、未来の根っこになる。
本物の師匠に出会うまで — 僕自身の話
僕ね、25で起業して、治療家としてスタートしたとき、「何を学ぶべきか」がまったく分からなかったんですよ。セミナーが山ほどあって、どれが本物か分からない。
2021年ごろから毎週土日、本当に手当たり次第に学びに行き始めました。関西から東京まで飛んで、「これかな」「違うな」を繰り返して。費用も時間も、えぐいくらい使いました(笑)。はたから見たら「何やってんの」って感じやったと思います。
でも今から振り返ったら、その「探して、探して、探しまくった体験」そのものが、僕を育てていたんです。技術を身につけた以上に、あの期間に「本物はここや」と判断できる目が育った。「これは違う」と切り捨てる勇気も育った。10年やってみて、もう新しいセミナーを追いかけなくてよくなった——それは技術を得たからだけじゃなくて、あの熱中体験で根っこが育ったからやと思っています。

子供の「好き」もこれと同じやと思うんです。将来仕事になるかどうかは、後から決まること。今、熱中できているか——それだけです。
「好き」の種を見つける3つの観察ポイント
じゃあ、親御さんは何をすればいいか。答えはシンプルで、観察することです。でも観察にも「見るポイント」があります。
① 時間を忘れているか
好きなことをしているとき、子供は時間感覚を失います。「ご飯よ」と呼んでも返事がない(笑)。それ、フロー状態に入っている証拠です。才能の芽です。
② 「もう一回」が自然に出るか
失敗しても「もう一回やる」「もっとうまくやりたい」が自然に出るか。親が「続けなさい」と言わなくても続けているなら、本物の「好き」です。これが内発的動機の証拠。
③ 自分で工夫しているか
やり方を変えてみる、素材を変えてみる、誰かに教えてもらわなくても試行錯誤している——これが自律心のはじまりです。

上の3つが揃っているなら、それがなんであれ、大切にしてあげてください。恐竜でも、虫でも、ゲームでも。「将来役に立つか」じゃなくて、「今、本気でやっているか」が大事なんです。
熱中体験を守るために、親ができること
最後に、親御さんに実践してほしいことを3つ伝えます。
1. 「何になりたいの?」より「何が楽しかった?」を聞く
「将来どうするの?」「仕事になるの?」という問いは、子供を未来に引っ張りすぎます。「今日は何が楽しかった?」「それのどこが好きなの?」——この問いが、今に集中する力と、自分の「好き」を言語化する力を育てます。
2. 好きな環境を整えて、邪魔しない
図鑑を置く、材料を用意する、専門の場所に連れて行く。そして、本人が集中しているときは「邪魔しない」。過干渉でも放任でもない。「ちゃんと見ている」という安心感を与えながら、手は出さない——これが最高の支援です。
3. 辞めることを責めない
「せっかく始めたのに」と言いたくなる気持ち、分かります。でも、熱中を試して「これじゃなかった」と気づくことも、立派な経験です。辞めた体験が、次の本物の「好き」に出会う準備になります。うちも治療の世界で「これじゃない」を何十回もやってきた。それが「本物」を見つける目を育てた。

まとめ — 好きを仕事にしなくていい。熱中した記憶が人を育てる
「好きを仕事に」という言葉は、素晴らしいスローガンのように聞こえる。でも僕は、それより大切なことがあると思っています。
今、何かに夢中になれているか。
それがゲームでも、虫でも、絵でも、スポーツでも。仕事に直結しなくていい。その熱中体験の中で育まれた「粘り強さ」「自律心」「失敗への耐性」が、子供の根っこになります。根っこが強ければ、どんな木でも伸びていける。
僕が治療家として10年以上かけて学んだのは「見えないところに原因がある」ということです。子育ても同じ。表面の「好きが仕事になるか」ではなく、その熱中体験が子供の内側で育てているものに、目を向けてほしい。
「子供の可能性は無限大です」って僕はいつも思っています。まずは今日から、子供の「夢中の顔」をじっくり観察してみてください。そこに、あなたのお子さんの根っこが見えるはずです。

