「気温」が検索トレンドに並ぶこの数日、9月も終わろうというのに30℃近い日が各地で続いている。かつては夏の一時期だけの話題だった「暑さ」が、いまや9月、10月にまで及ぶようになった。この変化は天気予報だけの話ではない。教室や勉強部屋の室温もまた、以前より長い期間「高め」の状態が続いているということであり、子どもの学習環境に直接関わってくる問題だ。

なぜ今「気温」なのか — 見過ごされてきた学習環境という論点

「気温」が検索トレンドに顔を出すこの数日、9月も終わろうというのに30℃近い日が各地で続いている。かつては夏の一時期だけの話題だった「暑さ」が、いまや9月、10月にまで及ぶようになった。この変化は天気予報の話にとどまらない。教室や自宅の勉強部屋の室温もまた、以前より長い期間「高め」の状態が続いているということであり、子どもの学習環境に直接関わってくる問題だからだ。

多くの家庭では「子どもが集中しないのは、やる気やスマホのせい」と考えがちだ。しかし国内外の研究を見ていくと、単純に「室温が高い」というだけで、集中力や記憶力、計算のスピードが低下することがわかっている。勉強法や声かけを工夫する前に、まず部屋の温度計を見る。これだけで、子どもの学習効率が大きく変わる可能性がある。本稿では、その根拠となる研究データと、家庭ですぐに実践できる対策を具体的に紹介していく。

気温トレンドと学習環境 図:気温トレンドと学習環境

「暑い教室」で学力はどれくらい落ちるのか — 研究データが示す事実

デンマーク工科大学のワーゴッキとワイオンらは、実際の小学校の教室で温度を変えながら、子どもたちの計算課題や言語課題の成績を比較する実験を行った。その結果、教室の温度を30℃前後から20℃前後まで下げると、数的処理や言語課題の成績が最大で2割程度改善したと報告されている。エアコンの効きが悪い教室で「なんとなく成績が伸びない」と感じていたとしたら、原因は勉強法ではなく室温だった可能性がある。

同様の傾向は大人でも確認されている。ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームは、冷房のない寮で夏の熱波を過ごした大学生と、冷房のある部屋で過ごした学生の認知テストの成績を比較した。その結果、冷房のない環境にいた学生は、反応速度や計算課題の成績が有意に低下していたという。子どもは大人よりも体温調節機能が未発達なため、同じ暑さでもより大きな影響を受けやすいと考えられている。

気温と成績の関係(目安) 図:気温と成績の関係(目安)

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文部科学省の「学校環境衛生基準」を知っていますか

実は日本には、教室の温度について国が定めた基準がある。文部科学省の「学校環境衛生基準」では、教室の温度は児童生徒等に望ましい環境として一定の範囲に収めるよう定められており、この基準は数年おきに見直されている。かつては上限が30℃前後とされていた時期もあったが、近年は夏の猛暑や熱中症リスクの高まりを受けて、より低めの上限に改定された経緯がある。基準の存在自体、あまり知られていない。

とはいえ、基準はあくまで「望ましい状態」を示すものであり、すべての教室が常にその範囲に収まっているとは限らない。校舎の構造や設置されている空調設備によって、実際の教室の温度にはばらつきがある。気になる場合は、学校に室温や空調の運用状況を確認してみるとよい。多くの自治体・学校では、保護者からの問い合わせに応じて、教室環境について説明してくれる窓口を設けている。

学校環境衛生基準の要点 図:学校環境衛生基準の要点

家庭でできる「学習環境」の温度管理、実践編

家庭での対策は難しくない。まず、勉強部屋やリビングに温度計を置き、体感ではなく数字で室温を把握することから始めたい。目安としては夏場は26〜28℃程度、それ以上になると集中力の低下が起こりやすいとされる。エアコンの設定温度だけでなく、実際に子どもが座っている場所の温度を確認するのがポイントだ。窓際やエアコンから遠い席は、想像以上に温度が高くなっていることがある。

また、冷やしすぎればよいわけでもない。過度な冷房は体調不良やだるさの原因にもなるため、扇風機やサーキュレーターを併用して空気を循環させ、設定温度を下げすぎずに体感温度を調整する方法がおすすめだ。加えて、1時間に1回程度は短時間でも換気を行うことで、二酸化炭素濃度の上昇による眠気やぼんやり感も防ぎやすくなる。温度管理は、特別な道具がなくても今日から始められる学習環境づくりだ。

今日からできる室温管理 図:今日からできる室温管理

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「暑さ対策」の電気代、実は使える支援制度がある

室温管理を意識すると、当然ながら気になってくるのが電気代だ。夏場のエアコン使用時間が延びれば、家計への負担も大きくなる。「子どものために我慢して電気代を払う」状態が続くのは、決して望ましいことではない。実はこうした負担を軽減するために、電気料金の助成や、省エネ家電への買い替え支援を行っている自治体は少なくない。存在を知らないまま利用していない家庭も多いのが実情だ。

具体的な支援内容は自治体によって異なり、電気代そのものを補助する制度もあれば、エアコンなど省エネ家電の購入・買い替え費用の一部を補助する制度もある。多くの場合、申請には所得要件や期間の制限があるため、まずは住んでいる自治体の公式サイトや窓口で「省エネ家電購入補助」「電気料金助成」といったキーワードで確認してみるとよい。使える制度を知っておくだけで、暑さ対策のハードルはぐっと下がる。

使える暑さ対策の支援 図:使える暑さ対策の支援

「暑さに強い子」を育てるのは、実は非認知能力

温度管理と同じくらい大切なのが、子ども自身が「暑い」「しんどい」と気づき、それを言葉にして周囲に伝える力だ。これは知識や成績とは違う、いわゆる非認知能力の一種であり、自分の状態を把握し、必要な行動を選び取る自己調整力の土台になる。小さいうちから「今、体はどう感じている?」と問いかける習慣をつけておくと、子どもは自分の不調や違和感に気づきやすくなっていく。

気づいたことを我慢せずに伝え、水分をとる、休憩する、涼しい場所に移動するといった対処を自分で選べるようになることは、暑さへの耐性だけでなく、将来ストレスや体調の変化に直面したときの対応力にもつながっていく。温度計を見る習慣、体調を言葉にする習慣、そのどちらも、特別な教材がなくても家庭の日常の中で育てられる非認知能力だ。暑さ対策は、実は学びの土台づくりでもある。

気づく力を育てる過程 図:気づく力を育てる過程

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まとめ

まとめると、①教室・家庭の室温は学力に直結し、研究では温度が高いほど成績が下がる傾向が示されている②文部科学省には教室温度の基準があるが、実態は学校ごとに差がある③家庭では温度計での可視化と換気の併用が効果的④電気代の負担は自治体の助成制度で軽減できる場合がある⑤暑さへの気づきと対処を子ども自身が学ぶことも、大切な非認知能力の育成につながる。

参考文献

  • Wargocki, P., & Wyon, D.P. (2007). The effects of moderately raised classroom temperature and classroom ventilation rate on the performance of schoolwork by children. HVAC&R Research, 13(2).
  • Cedeño Laurent, J.G., et al. (2018). Reduced cognitive function following heat exposure in young adults without air conditioning. PLOS Medicine(ハーバード大学公衆衛生大学院).
  • 文部科学省「学校環境衛生基準」